解説
ドラマの舞台 1940年代アイルランドについて
アイルランドは古くから隣国イングランドの干渉を受けてきた。宗教改革以降はプロテスタントであるイギリス系が少数派ながら支配層に、大多数のカトリックが被支配層となり、1801年にはついにイギリスに併合されてしまう。奪われた土地と権利を奪回すべく 様々な運動が起こっては抑圧されてきたが、1916年のイースター蜂起をきっかけに独立闘争が加速、イギリスからの自由を求めるアイルランド人同士が戦うという内戦の悲劇を経て、1922年、アイルランドはようやく実質的な独立を果たす。しかし北部の6州、「北アイルランド」はイギリス領として残存する、というものだった。第二次大戦中アイルランドはイギリス側にはつかず、中立国の立場をとる。この映画の主人公ローズは、イギリス領北アイルランドの都会から、アイルランドの田舎町に疎開してきたプロテスタントなのである。
――解説:佐藤泰人(日本アイルランド事務局長/東洋大学文学部准教授)
COMMENT
自由のない時代に生きた女性たちの強さと信念が胸に響きました。年を重ねてもなお輝きを失わないヴァネッサ・レッドグレイヴの存在感が凄い!!思いがけない結末に感動しました。
――岩下志麻(女優)
素晴らしい映画です。この時代の背景、人間関係、一人の女性の生き方、負けない、折れない自分を信じる姿、なんと強く生きる女性ローズに涙なくしては見られない、感動です。配役、監督、全てのきめ細やかさに拍手です。久しぶりに本当に素晴らしい映画に出会いました。
――佐伯チズ(美容家)
男が父になる、女が母になる
その大きな違いを見た。
ローズのシワ一本一本に私はあの人の妻、
あの子の母やと訴え続けた日々を見たマリア様も
びっくりやと思う、あっ、だからあのエンディング、ギフトなんやけどな。
――綾戸智恵(ジャズシンガー)
英国への敵意、宗派対立、因習に支配される社会、アイルランドの暗い過去を描いているが、隠された主題は男性の嫉妬である。華やかな女性、醜い嫉妬、そして結末の奇跡、光と闇の対比が印象に残る作品であった。
――崎山直樹(千葉大学 国際教養学部講師)
「愛を込めて見たものは真実」決して諦めない彼女の強さと美しさがこころの拠り所と愛の大切さを教えてくれる。
いまこそ先入観や溢れる情報、社会的圧力に流されない「こころの目」を養わなければならない。
身体とこころがじわっと潤う映画。
――山名裕子(臨床心理士)
いかにもアイルランドらしい国家・宗教・共同体の問題を描きながら、歴史的条件と「個」とのせめぎ合いという普遍的テーマが観る者の心を打つ。いっときの自由を象徴するかのような、北西部の海の冷たい美しさも必見。
――佐藤泰人(日本アイルランド協会事務局長)
日記が明かす40年間を精神病院で過ごした老女(ローズ)の過去。その過去とは”ローズがローズであるため”の愛だった!? 衝撃的な秘密へのジム・シェリダンの真面目なアプローチに映画の良心を見た。最後まで目が離せない。
――きさらぎ尚(映画評論家)
Please watch and enjoy this film(この映画を観て!そして楽しんでください!)
――アン・バリントン駐日アイルランド大使
何かの「違い」があること――異邦人であること。(男じゃなくて)女であること――を理由にないがしろにされても、こてんぱんにされたとしても当たり前だった時代。
人生すべてを蹂躙され、翻弄されても自分を曲げず、偽らないローズの姿はマイノリティである全ての人達への勇気になる。
――シトウレイ(フォトグラファー、ジャーナリスト)
※順不同・敬称略